甲状腺疾患とは?
甲状腺はのど仏の少し下に存在する蝶々のような形をした臓器です。甲状腺は甲状腺ホルモンを生成します。甲状腺ホルモンの主な機能は、身体にアクセルを踏ませることです。
甲状腺の病気は、大きく2つに大別されます。1つ目は、甲状腺ホルモンの分泌量が多くなったり少なくなったりする機能に関係する病気です。もう1つは甲状腺にできものができる病気です。日本甲状腺学会がガイドラインを策定しております。以下のURLをご参照ください。http://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.htmlではそれぞれについて見ていきましょう。
甲状腺機能異常
1.甲状腺機能亢進症(例:バセドウ病)
女性に多い病気です。若い場合には20歳から発症することもあり、30〜40歳代で最も多く発症します。原因としては、免疫機能の異常が指摘されています。通常であれば外敵を攻撃するはずの免疫機能が、なにかのきっかけで自分の甲状腺を攻撃してしまうようになります。そのきっかけについてはまだ解明されていません。
過剰に身体にアクセルを踏んでしまうため以下のような症状が現れます。
- 動悸がする。脈が速い。
- 汗が多い。暑がる。
- イライラする。手足が震える。
- 食欲が旺盛になる。体重が減少する。
- 眼球が出てくる。
検査としては、血液検査で甲状腺ホルモンが上昇するのは分かると思いますが、その他には甲状腺を攻撃する免疫機能の数値も上昇します。その他には超音波検査や心電図検査、胸部レントゲン検査などで異常を認めることがあります。
治療としては、甲状腺の機能を抑制するお薬を内服する方法、放射線で甲状腺を一部壊す治療、手術で甲状腺の量を減らす治療があります。
その他にも甲状腺機能を亢進させる病気として、亜急性甲状腺炎(甲状腺が炎症を起こして、甲状腺が壊れてしまい甲状腺ホルモンが大量に放出されてしまう病気)などがあります。
2.甲状腺機能低下症(例:橋本病)
甲状腺機能が低下する病気はいくつかありますが、その中で最も多いのが橋本病(慢性甲状腺炎)です。バセドウ病同様に女性に多い病気で、20歳代後半から発症しやすく、30〜40歳代で最も多く発症します。こちらも実はバセドウ病と同じく自分の甲状腺を攻撃してしまうことが原因で発症します。しかし何故自分を攻撃してしまうのかは分かっていません。
身体にアクセルが踏めなくなるので以下のような症状が現れます。
- むくみ。脈が遅くなる。
- 皮膚の乾燥(新陳代謝が低下するため)
- 無気力。
- 食欲の低下。体重が増加する。
検査としては、甲状腺ホルモンが低下するのに加えて、甲状腺を攻撃する免疫機能の数値も上昇します。超音波検査や心電図検査、胸部レントゲン検査などで異常を認めることがある点もバセドウ病と同様です。
治療としては、主に甲状腺ホルモンを補充する治療になります。
甲状腺腫瘍
腫瘍(できもの)には「良性」と「悪性」があります。一番重要な検査は超音波検査になります。超音波検査で悪性と良性のだいたいの目星をつけることができます。次にできものに針を刺して細胞を採取して顕微鏡で確認する細胞診検査を行います。必要に応じてCT検査などを追加します。甲状腺腫瘍の大半が良性です。甲状腺腫瘍も女性に多い病気です。では良性と悪性それぞれで確認していきましょう。
1.甲状腺良性腫瘍
- 腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)という良性腫瘍が一番多い良性腫瘍になります。甲状腺の細胞が増えてしまい、しこり形成する病気です。この病気は良性ですが、一部にがんが含まれていることもあるため、定期的に検査をして悪性の所見がないか確認することが必要です。
- 濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)は後述する濾胞癌との鑑別が極めて困難であり、実際には手術をして摘出した甲状腺を顕微鏡で確認しても鑑別が困難なことがあるほどです。
- 甲状腺嚢胞(ろほう)とは、甲状腺の中に水風船のようなできものができる病気です。他の良性腫瘍の内部で出血などが起きて膨らんでしまうことがほとんどです。
2.甲状腺悪性腫瘍
- 乳頭がん(にゅうとうがん)は甲状腺悪性腫瘍で最も多く、全体の9割以上を占めています。この癌は進行が遅く転移もしづらいおとなしい癌です。そのため、極めて小さい場合には手術をせずに慎重に経過観察も可能ということがガイドラインで記載されています。
- 濾胞がんは、上述のように濾胞腺腫との鑑別が困難です。こちらも進行が遅くリンパ節への転移がしづらいのは乳頭がんと同じですが、肺や骨などに遠い部位に転移を起こすことがあるため早めに摘出することが重要です。
- その他には、ホルモンを産生する髄様がんや極めて予後の悪い未分化がんなどがあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。甲状腺と一言でいってもこれだけ沢山の病気が隠れている可能性があります。気になる症状があればまずは市川ピースクリニックで一度ご相談ください。