はじめに

子供は急性中耳炎だけでなく滲出性中耳炎にもかかりやすいことがわかっています。そのため日本耳科学会および日本小児耳鼻咽喉科学会が小児滲出性中耳炎のガイドラインを作成しております。最新版は2015年度版となっております(2019年2月現在)。
滲出性中耳炎の概要に関しては、中耳炎外来の項をご参照ください。
ではガイドラインの重要なポイントを見ていきましょう。

滲出性中耳炎の罹患率は?

滲出性中耳炎にかかる確率は実はすごく高いと考えられており、1歳までに50%以上、2歳までに60%以上が罹患するといわれています。小学校に入るまでに90%の子供が一度は罹患するとまで言われるほどありふれた病気なのです。

滲出性中耳炎の症状は?

急性中耳炎のように痛みを訴えたりすることが少ないため、気づかずに見過ごされていることも多いです。しかし、滲出性中耳炎に罹患していると、難聴を引き起こし、結果として言語発達の遅れや、学習機能の低下などを生じることもあるため、子供に対する影響が極めて大きいと言えるでしょう。

小児滲出性中耳炎01

自然治癒の可能性は?

ほとんどの症例が3ヶ月以内に自然に治りますが、30〜40%では滲出性中耳炎が再発します。さらに5〜10%は治癒するのに1年以上かかるといわれています。
自然治癒の大半は発症から3ヶ月以内であり、それ以降は自然治癒の可能性は低くくなります。

どんな時に罹患してしまうの?

小児の滲出性中耳炎は、風邪をひいたときや急性中耳炎にかかった後に発症することが約50%といわれています。そのため、風邪をひいた場合には耳鼻咽喉科で耳を確認してもらうことをお勧めします。実際に急性中耳炎発症後4週で41%、12週で26%もの患児に中耳貯留液を認めるという報告もあります。

どんな子供が罹患しやすいの?

中耳炎が起きる“中耳”という空間は、耳管という管によって鼻の奥と繋がっています。そのため、この耳管の機能が悪いと滲出性中耳炎にもかかりやすいことがわかっています。耳管機能が悪くしてしまう原因にアデノイドが大きいこと、鼻すすりの癖がある子供、アレルギー性鼻炎で鼻の通り悪い子供などが挙げられます。
滲出性中耳炎の子供は、アレルギー性鼻炎の合併率が滲出性中耳炎のない子供に比べて約5倍も多いといわれており、鼻・耳・のどを総合的に治療する必要があります。
アレルギー性鼻炎の根本治療にもなり得る舌下免疫療法も最近では子供にも行えるようになっておりますので、舌下免疫療法の項もご参照ください。
その他にも、おしゃぶりの使用や人工乳の使用、受動喫煙などの関与も難治化の要素として考えられています。

滲出性中耳炎にはどんな検査があるの?

①鼓膜所見

鼓膜が薄くなってしまったり、凹んでしまったり、貯まっている貯留液の色はどのような色調かなど詳細に確認する必要があります。

②聴力検査

当然のことながら乳児や幼児では上手く聴力検査ができないことが多いので、特殊な聴力検査を行います。多くの場合は大きい病院で行われます。市川ピースクリニックには習熟した臨床検査技師がおりますが、大人と同じ聴力検査ができるのは早くても4歳ごろからです。

③ティンパノメトリー

耳に空気を送り、鼓膜の中が陰圧かどうか調べる検査です。

④周辺器官の確認

上述のように鼻やのど、いびきの状態などを確認します。

滲出性中耳炎の治療とは?

①経過観察できる症例は?

  • 鼓膜の病的変化ない場合は3ヶ月間は経過観察。
  • 3ヶ月以上続く両側滲出性中耳炎であっても、鼓膜の病的所見がなく、難聴が軽度であれば経過観察可能。

②手術以外の治療は?

  • 内服薬としては、カルボシステインが唯一の治療薬。
  • 通気といって、鼻から空気を送り込んで耳管から中耳の通りをよくする治療。

③手術はどんな治療?

鼓膜に穴を開けて、トンネルを作り、土管のようなものを入れ、穴が自然と塞がらないようにします。これを鼓膜換気チューブ留置術といいます。

小児滲出性中耳炎02

手術が必要な滲出性中耳炎の子供は?

  • 発症から3ヶ月以上続いており、両側の滲出性中耳炎があり、難聴を認める場合
  • 片側であっても病的変化がある場合は、鼓膜換気チューブ留置術を考慮
    【注意】3歳未満は聴力評価も困難なため、難聴が明らかでない場合には外科的治療は慎重に検討すべきとしています。

まとめ

鼓膜換気チューブは挿入するとその後も定期的な観察や、チューブを抜いた後も穴が残るリスクもあり、まずは自然治癒できるように手助けしてあげることが重要です。
そのためにも滲出性中耳炎を見逃さないこと、アレルギー性鼻炎など滲出性中耳炎を悪くさせてしまう可能性のある病気を治療することが重要です。
耳のこと、鼻のこと少しでも気になりましたら気軽に市川ピースクリニックでご相談ください。