舌下免疫療法とは?
舌下免疫療法は最近よく耳にする新しい治療です。ちまたでは、花粉症が治るらしいという誤った知識が流布していますが、すべての人の花粉症やアレルギー性鼻炎を治せる訳ではありません。
では詳しく説明していきましょう。
そもそも舌下免疫療法とは?
舌下免疫療法とは、アレルゲン免疫療法という治療の1つです。アレルゲン免疫療法とは、アレルギーの原因物質(これをアレルゲンといいます)を体に投与することで、アレルゲンに曝された際に生じる症状を軽くすることを目的としています。症状を軽くすることが主な目的であり、完全にアレルギーがなくなるわけではないのです。
舌下免疫療法とは、口にアレルゲンを投与するという新しい投与方法で行う治療です。
アレルゲン免疫療法には、注射でアレルゲンを投与する皮下免疫療法という治療法もあります。この治療法は日本で1963年から行われているほど昔からある治療法です(ちなみに世界では1911年に初めて行われた治療なのです)。後ほど皮下免疫療法と舌下免疫療法のメリットデメリットについてはご説明します。
舌下免疫療法の現状
舌下免疫療法は2014年にスギ花粉に対しての保険適応が開始されました。2015年にはダニアレルギーに対する舌下免疫療法が世界に先駆けて開始されました。
スギ花粉には液状のシダトレンと、錠剤のシダキュアがあります。
シダトレンに比べてシダキュアの方が、保管が簡単(シダトレンは冷所保存、シダキュアは常温保存)。適応年齢に違いがある(シダトレンは12歳以上が適応、シダキュアは5歳以上が適応)。含有量が多い(シダキュアはシダトレンの2.5倍)。
これらの理由から当院ではシダキュアのみを扱っております。
皮下免疫療法との違いは?
では昔からある皮下免疫療法と新しく始まった舌下免疫療法ではどんな違いがあるのでしょうか。
皮下免疫療法 | 舌下免疫療法 | |
---|---|---|
投与できるアレルゲン | 複数あり(下記参照) | スギとダニのみ |
効果 | より高い | 高い |
疼痛 | あり | なし |
副作用出現率 | 重篤なことあり | まれにあり |
投与場所 | 病院 | 自宅 |
投与後の観察 | 毎回30分病院で経過観察 | 初回のみ30分病院で経過観察 |
複数抗原の投与 | 可 | 不可 |
投与できるアレルゲン | 種類 | 舌下 |
---|---|---|
スギ花粉 | ● | ● |
ダニ | ● | ● |
ハウスダスト | ● | – |
アカマツ花粉 | ● | – |
ブタクサ花粉 | ● | – |
ホウレン草花粉 | ● | – |
真菌類(5種) | ● | – |
(参照:鳥居薬品アレルゲン製品一覧)
このように皮下免疫療法の方が効果が強い反面、副作用の出現率が高かったり、舌下免疫療法は簡単ではありますが、複数の抗原の投与ができないなどそれぞれのメリットデメリットがあることがおわかりいただけたかと思います。
市川ピースクリニックではどちらも取り扱いがありますので、患者様の状況に応じてご提案させていただいております。
投与開始時期は?
ここが重要ですが、スギ花粉症舌下免疫療法は6月から12月までを開始の目安としています。この治療は、即効性が期待できるわけではなく、体質改善のため長期的に行う必要があります。花粉症飛散期は治療開始ができません。
舌下免疫療法では、スギ花粉とダニの抗原の投与を同時に開始することはできません。
ただし、開始時期が異なれば、同時に治療を行うことは可能です。
適応は?
○ 鼻アレルギー診療ガイドラインでは、軽症から最重症まですべての患者様に対してスギ花粉のアレルゲン免疫療法を推奨しています(鼻アレルギーガイドライン概説の項をご参照ください)。
○ 年齢
スギアレルゲンのシダキュア、ダニアレルゲンのミティキュアともに5歳以上
治療できない人は?
- 重症もしくはコントロール不良の気管支喘息
- アナフィラキシーショックの既往歴
- スギ、ダニ以外のアレルギーを強く持つ方
- 妊婦、授乳婦の方
- ステロイド、βブロッカー(血圧、不整脈)、などのお薬を内服中の方
治療の流れは?
- 皮内テストもしくは採血にてアレルギーの有無を同定します。
- 当院にて免疫薬を投与します。
- 30分間院内にて経過観察。
- アナフィラキシーショックのような重篤な副作用が生じる可能性があるため。場合によっては救急搬送など適切な対応を行わせていただきます。
- アナフィラキシーショックについては、「アナフィラキシーショック」の項をご参照下さい。
- 2週間後に受診し、抗原の量を増量。
- その後は4週間ごとに通院を行う
- ダニは2019年5月から4週間の処方が可能になりますが、それまでは2週間ごとの受診が必要です。
治療期間は?
一般的に皮下免疫療法も舌下免疫療法も、3~5年間治療を継続することが推奨されています。治療終了の目安は完全に症状がなくならなくても、アレルギー症状が楽になったら、いったん治療を終了します。スギもダニも9割以上の患者様で効果があると言われています。治療を終了しても効果を維持できる人もいますが、徐々に症状が再発してしまうことがあります。その場合はまた免疫療法を再開すると、治療効果を得られるとの報告もあります。治療の中断・終了は市川ピースクリニックでご相談ください。
効果が現れるまでの期間は?
数ヶ月で効果を実感いただける場合や数年後に改善がみられる場合など、効果が出るまでの期間は様々です。1年目より2年目、2年目より3年目の効果が大きいという報告もあり、長期的な目線で治療を続けていく必要があります。
注意点は?
- 服用する前後2時間程度は、激しい運動、アルコール摂取、入浴を避ける。
- アナフィラキシーなどの副作用の可能性があるため、家族のいる場所や日中の服用が望ましい。
- 投与後5分間はうがいや飲食はしない。
費用は?
初回の診察・検査等で5,000円程度(3割負担)です。免疫舌下療法のみでの治療の場合、スギで約2,000円(3割負担)/月、ダニで約3,500円(3割負担)/月の窓口負担となります。
参考サイト
ダニアレルギーにおけるアレルゲン免疫療法の手引きhttps://www.jsaweb.jp/uploads/files/180618dani.pdf
スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引きhttps://www.jsaweb.jp/uploads/files/sugi_tebiki16_honmon.pdf
まとめ
年単位で適切に治療を行った場合、効果が長期間持続する画期的な治療であることがわかってもらえたでしょうか。また現在かかっていない新規のアレルギー疾患になりづらいことや、花粉による小児アレルギー性鼻炎患者の場合には、その後の喘息発症頻度が減ることが報告されています。
世界的にもアレルギー患者様の数は増加傾向にあり、早めに治療を開始することが重要です。
アレルギーで気になることがありましたら一度市川ピースクリニックでご相談ください。