耳鳴り外来とは?
日本人の65歳以上の30%以上が耳鳴りで苦痛を感じていると言われているほどありふれた症状です。
しかし、耳鳴に関する根本的な治療法はまだ確立されていません。そのため、当院にも「耳鳴は治らないと言われた」と言ってお話しをされる患者様が沢山いらっしゃいます。
確かに治すことは出来ないかもしれませんが、一番大切なことは治すことではなく、耳鳴りが生活に支障を来さなくなることなのです。
つまりゴールを「治す」ではなく、「気にならなくする」であることを患者様と共有することが治療の第一歩となります。
聞こえのしくみ
哺乳類は音を脳で認識しています。まず、外耳(いわゆる耳)で音を集め、外耳道を通って鼓膜に達します。鼓膜から中耳を経由して音を増幅します。そして内耳と言われる器官で音という振動を電気信号に変換します。その電気信号が神経を経由して脳に届き、我々は初めて音として認識ます(詳しくは難聴とは?の項をご参照ください)。
※正確には、蝸牛からの信号は脳の視床と言われる部分に入り、その後聴覚野に伝わります。
これだけ聞くと耳鳴りと聞こえは関係ないように思われるかと思います。しかし耳鳴りに悩む患者様のうち、9割の人が難聴を併発していると言われています。このように耳鳴りと難聴は、極めて密接に関係しています。次に耳鳴りの仕組みについて見ていきましょう。
耳鳴りの仕組み
では難聴の耳鳴りの関係について詳しく説明します。
蝸牛に障害が発生すると、難聴が生じます。これを感音難聴と言います。
その結果、脳に届く電気信号は弱くなります。その結果、聞こえない音を聞こうとして、脳は信号を強くしようと働きます。
その結果、聞こえなかった小さな音が大きくなり、耳鳴りとして聞こえるようになります。
耳鳴りの症状
耳鳴りと言っても耳鳴りの音は人によって様々です。
難聴に伴う耳鳴りの場合は難聴が生じている音域で出現することがほとんどです。代表的な加齢性難聴についてご説明します。
年齢が進むにつれて、主に高い音の聞こえが悪くなります。これを加齢性難聴と言います。難聴が進行すると上述のように耳鳴が発生することがあります。高音の難聴であれば耳鳴りも「キーン」や「セミの鳴く音」のような高い音として認識されていることがほとんどです。
逆に「ぼー」や「モーターの音」のような耳鳴りは、突発性難聴や急性低音障害型感音難聴に伴う耳鳴りのこともあります。
症状をお伺いし、聴力検査と耳鳴りの検査を行います。
耳鳴りの検査
当院では、耳鳴の検査を実施しております。この検査は、聴力検査の結果を基に、耳鳴りがどの音域でどの大きさで鳴っているかを調べる検査です。
この検査は熟練した臨床検査技師が実施するため、検査できる医療機関は限られています。
耳鳴りの治療
■ 教育的カウンセリング
耳鳴りの治療は以下の流れで進んでいきます。
- ①難聴に伴う耳鳴りなのかどうか
- ②もし難聴に伴う耳鳴りだとしたら、難聴を治すことができるのか
- ③難聴を治すことが出来ない場合は、耳鳴をなくすことよりも耳鳴で困らないようにすること目標にする
難聴に伴う耳鳴りであり、難聴を治療することができれば、難聴の改善とともに耳鳴り自体が消失する可能性があります。
しかし、加齢性難聴のような治らない難聴の場合は、耳鳴りをなくすことは難しく耳鳴りで困らないようにすることが目標となります。
では治らないけど困らないようにするにはどうすればいいでしょうか?
- ①耳鳴りに関するカウンセリングを実施する
- ②補聴器を利用する
検査をして、補聴器を使いましょうと言われても患者様は困ってしまいます。なぜなら、「耳鳴りのせいで聞こえが悪いのに、補聴器なんてしたら余計に耳鳴りが気になるでしょう」と。
先ほど説明しましたが、耳鳴りのせいで聞こえがわるいのではなく、聞こえが悪いから耳鳴りが発生しているのです。
まずはこのことを理解してもらうことが第一歩になります。耳鳴りは、耳鳴りに気を向ければ向けるだけ脳は耳鳴りを大きくしてしまいます。なので、カウンセリングとしては以下になります。
- 難聴を改善することで耳鳴りが小さくなることを理解する
- 耳鳴りのことをできるだけ意識しないようにする
このように耳鳴の治療はカウンセリングが最も重要だということがご理解いただけたかと思います。実際に、日本聴覚医学会は「耳鳴診療ガイドライン2019年版」を発行しました。その中で重要な項目として、「教育的カウンセリング」を挙げています。
■ TRT
補聴器のように耳に入れる機器で、さざ波のような音を常時流すことで耳鳴りを軽減する治療としてTRTというものがあります。即効性はないですが、改善する患者様もいらっしゃいます。また補聴器にTRTの機能(サウンドジェネレータと言います)が搭載されているものもあります。
サウンドジェネレータは医師の指導がないと、音を設定することが出来ないため、当院のように補聴器外来を実施している医療機関で利用することをお勧めします。
※補聴器外来は木曜日にやっておりますので、TRTを検討されている方は木曜日に受診をお願いいたします。