心療内科・精神科とは
現代社会では、生活環境の変化や仕事、人間関係のストレスなどから、誰もが少なからず心の悩みを抱えることがあります。
「疲れがとれず体がだるい」「イライラや不安が続く」「頭痛や吐き気、便秘など体の不調が繰り返される」――こうした症状がきっかけで、心のバランスを崩してしまうことも珍しくありません。
もし気分の落ち込みやイライラ、不安感が続き、日常生活に支障が出るようであれば、「そのうち良くなるだろう」と我慢せずに、早めに専門医へ相談することをおすすめします。
とはいえ、「精神科や心療内科にかかるのは少し抵抗がある」「どちらに行けばよいのか分からない」と感じる方も多くいらっしゃいます。内科や外科と比べて、精神科や心療内科はまだ受診のハードルが高く感じられる診療科かもしれません。
当院では、心療内科と精神科を併設し、体と心の両面から診療を行っています。最近では「メンタルの病気」という言葉が広く使われるようになり、受診へのハードルも少しずつ下がってきました。実際の診療においては両者に大きな違いはありませんが、患者さまが安心して受診できるよう、それぞれの特徴を分かりやすくご説明し、ご自身に合った形で治療を進めていただけるようにしています。

心療内科とは
心療内科は、ストレスや心理的な要因によって身体に症状が現れる状態を専門的に診る診療科です。
「吐き気や頭痛、動悸が続く」「下痢や腹痛が頻繁に起こる」「血圧が上がる」「喘息のような症状がある」など、体に不調があるのに検査では異常が見つからない――その背景にストレスが関わっている場合、心療内科での診療が有効になることがあります。
特に、内科や他の診療科で検査を受けても原因がはっきりしない場合、心療内科を受診することで、症状の改善や治療につながるケースが少なくありません。
心療内科でよくご相談いただく症状の例
・人間関係の悩みが続き、気分が沈んでいる
・めまい・耳鳴り・立ちくらみが強いが、検査では異常がなかった
・朝、会社や学校に行こうとするとお腹を壊してしまう
・理由もなく涙が出てしまう
・やる気が起きず、意欲が湧かない
・胸の締め付けやザワザワする不快感
・息苦しさや喉の詰まり感がある
・胃の不調(胸やけ、食欲不振など)が続く
・十分寝ても疲労感が取れない
・気候の変化に敏感で体調を崩しやすい
・慢性的な肩こりや腰痛
・頻尿や残尿感があるのに検査では異常がなかった
・光や音に敏感になる
・手足のしびれや冷え、だるさが続く
これらは一例ですが、いくつも重なって現れることもあります。
検査では「異常なし」とされるのに症状がつらい場合は、自律神経の乱れ(自律神経失調症)が関係している可能性があります。
自律神経失調症とは、ストレスや生活リズムの乱れなどによって、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れ、心身にさまざまな不調が起こる状態です。
自律神経は、心臓・肺・胃腸・血管・末梢神経など体の多くの働きを調整しているため、影響は全身に及びます。症状を我慢し続けていると、心の不調にもつながり、うつ病などの精神疾患に進行してしまうこともあります。
そのため、「原因不明の体調不良が続く」「検査で異常がないのに症状が改善しない」といった場合には、心療内科でのご相談をおすすめします。
精神科とは
精神科(精神神経科とも呼ばれます)は、心の症状や病気を専門に診療する診療科です。
気分の落ち込みやイライラ、落ち着きのなさといった気分症状、不眠や過眠などの睡眠のトラブル、幻覚や幻聴といった精神症状、さらに物忘れやこだわりの強さなど認知症に関わる症状まで、幅広く対応します。
代表的な病気としては、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、パニック障害などの不安障害、強迫性障害(OCD)、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などがあります。
精神科でよくご相談いただく症状の例
・周囲の人が自分の悪口を言っているように感じる
・疲れているのに夜眠れない/逆に寝過ぎてしまう
・誰かに後をつけられているように思える
・近所の人に監視されている気がする
・些細なことが気になって、何度も同じ確認をしてしまう
・動悸がして心細く、不安感が強い
・子どものころから落ち着きがなく、大人になっても困っている
・集中力が続かず、仕事や勉強に支障がある
・物忘れが増えてきた
・食欲がわかない、食べてもおいしいと感じられない
・食べ過ぎを繰り返してしまう(過食)
・罪悪感が強く「悪いことをしてしまった」と思い込む
・人前で過度に緊張してしまう
・気分が大きく落ち込む時期と、気分が高揚する時期を繰り返す
・朝は憂うつでつらいが、夕方になると気分が軽くなる
上記は一部の例にすぎません。
「この症状はどこに相談すればいいのだろう?」と迷う場合でも、精神科は幅広い心の症状を扱う診療科です。気になる症状が続いているときは、早めにご相談いただくことが回復への第一歩になります。