「アデノウイルスについて」
感染症の流行を起こすウイルスは多くあります。その中で、アデノウイルスも流行を起こす代表例です。

☆アデノウイルスは種類が多い
アデノウイルスの型は50種類以上が分かっています。型によって「プール熱(咽頭結膜熱)」や「はやり目(流行性角結膜炎)」、胃腸炎、そして咽頭炎などを多種の症状をきたします。

☆プール熱(咽頭結膜熱)」や「はやり目(流行性角結膜炎)」について
下の図のように、目や瞼(まぶた)が赤く同時に咽頭も赤い場合は「プール熱」、目の症状のみで咽頭が赤くなければ「はやり目」の可能性が高くなります。目や咽頭の症状も重要な診断根拠ですが、より診断を確実にするには、アデノウイルス抗原の迅速検査を行います。周囲で流行があるかの情報も診断に重要です。

検査は咽頭をこすった綿棒を試薬に漬け、その試薬をプレートに滴下します。上の図のように「判定」のところに線が入れば「陽性」です。

       
☆アデノウイルスは不思議なウイルス
アデノウイルスは小児科医も惑わされる場合があります。まず、目の症状が明らかにあれば、アデノウイルスのプール熱やはやり目を疑うことが可能ですが、最初に示した表に「急性呼吸器疾患」とあるように、アデノウイルスでも目の症状がなく、熱と咳の場合が多いのです。つまり、アデノウイルス以外が原因の咽頭炎かもしれないのです。他のウイルス性咽頭炎であれば、3,4日で解熱する場合が多いのですが、アデノウイルス咽頭炎の場合は熱が10日以上持続する場合があります。さすがに医師も5日以上の熱が持続すると、二次感染という細菌感染症の合併を考えます。細菌が体に入ると、血液検査で白血球数が増えたり、CRPという炎症反応の数値が高くなったりするので、医師としては採血検査を考えます。ウイルス感染単独では白血球数が正常であったりやや減少、CRPは軽度上昇になります。しかし、アデノウイルスではウイルス感染だけなのにあたかも細菌感染が合併したかのように白血球数が増多、CRP上昇するのです。医者泣かせなウイルスですね。

アデノウイルスで熱が長引いてもお子さんは元気な場合が多いのですが、親御さんも熱が7日も10日も持続すれば心配ですので、採血検査も考慮します。

☆アデノウイルスの治療
アデノウイルスへの特効薬はありません。しかし、眼症状がある場合は点眼薬の処方も考えます。

☆アデノウイルスの登園・登校
前述のような「プール熱」や「はやり目」では下のような登園・登校の決まりがあります。
・咽頭結膜熱(プール熱):主要症状の発熱、咽頭痛、眼球充血、眼脂が消えて2日目まで出席停止
・流行性角結膜炎(はやりめ):主要症状は眼球充血、眼瞼腫脹、眼脂。医師が感染の可能性がないと判断するまで(発症から約10日)

☆アデノウイルスのまとめ
  1. 50種類以上の型があり、型によって症状が多彩。
  2. 目の症状がある場合が重要で「流行性角結膜炎(プール熱)」や「流行性角結膜熱」は感染力が強く、登園・登校には医師の確認が必要(中央区立小学校はプール熱のみ)。
  3. 発熱が7日以上長引く場合がある。
  4. 診断方法には迅速抗原キットがある。

月島ピースクリニック 松田