1.臍(さい)ヘルニアとは?
臍ヘルニアは、一般的には「でべそ」と呼ばれています。生まれつき、お臍がドーム状に盛り上がった状態になっています。
臍ヘルニアは10人から20人に一人の頻度でみられます。珍しくない症状ですが、昔は5円玉の穴に紐を通し、ベルトのようにしてお臍を圧迫したことがありました。今は金属アレルギーを起す可能性や不潔だということで行われなくなりました。
 
      
妊娠期間中は胎内の赤ちゃんは臍帯の血管を通じてお母さんから栄養をもらっています。出生後は胎盤から臍帯(臍の緒)は脱落し、臍帯が通っていた腹筋のすき間が少しずつ塞がっていきますが、そのすき間が大きいままだと、そこから腸の一部がお臍の皮膚の下に飛び出すのです。
上から指で抑えると、グチュグチュやジュワっとした腸の感触があります。わかりやすい図があったので「さよママ@小児科医」さんのHPからお借りしました。

     
2.圧迫療法が行われるようになった
以前は、前述の5円玉による圧迫や何もせず1歳半程度まで様子をみました。何もしなくても1歳までに70%、2歳までに90%以上が自然に治るのです。
しかし、最近は飛び出たお臍を圧迫する「臍ヘルニア圧迫療法」を行うことが増えました。
この方法は、お臍を綿球などで上から抑え、テープで圧迫しよう、というものです。
いわゆる「でべそ」の外見を気にするご家族、そして大きな臍ヘルニアの場合、1歳まで待ってふくらみ(膨隆)が残り、手術で治しても臍周囲に皮膚がはみ出て見栄えが良くない(余剰皮膚)、という可能性があります。特に女児の場合はそれを心配する親御さんもいます。
もし、将来の見栄えが心配なら早期に圧迫療法をお勧めします。

3.圧迫療法はやるなら早めに
下の写真は「日本小児外科学会」のHPからのものです。左は生後71日の状態で、お臍の高さは15mm。圧迫療法で生後99日目で右のような外見になりました。
「生後4か月まで」に開始すれば効果は良くなるようです。

  
4.圧迫療法の実際
圧迫療法の考えは簡単です。「お臍の出っ張りを上から抑える」というものです。
圧迫さえできれば、どの方法もOKで、ネットでも圧迫用のセットが売られています。
        

5.圧迫の終了の判断は
 圧迫終了の目安は、お臍が陥没したら圧迫を中止します。大事なのは、圧迫がない状態で、泣いて腹圧がかかってもお臍が膨隆してこない状態が持続することです。圧迫期間は臍ヘルニアの大きさなどで変わりますが、早ければ1か月で突出がなくなる場合があります。

6.必ずしも必要な治療ではない
お腹をテープで圧迫されているのを見て親御さんがかわいそうだと思ったり、テープで皮膚の発赤を繰り返す、2,3か月たっても改善傾向がないなど、家族が赤ちゃんにとって負担だと思うよな状態であれば圧迫を中止し、1歳まで経過をみる、という選択も可能です。
必ず必要な治療ではないので、圧迫療法を行うかどうかは良く考えましょう。

7.もし、改善がみられない場合
圧迫療法で2か月経過しても改善がなければ、大きい病院の小児外科に紹介し、今後の治療方針(手術の検討を含めて)を相談していただく事を考慮します。