はじめに

子供が急性中耳炎にかかりやすいことは周知の事実と思います。そのため日本耳科学会が小児急性中耳炎のガイドラインを作成しております。最新版は2018年度版となっております(2019年2月現在)。
急性中耳炎の概要に関しては、中耳炎外来の項をご参照ください。
ではガイドラインの重要なポイントを見ていきましょう。

小児で急性中耳炎にかかる子供の数は?

日本での罹患率は不明ですが、欧米では1歳までに62%、3歳までに83%もの子供が急性中耳炎に罹患し、30〜40%の子供は3歳までに3回以上の急性中耳炎を罹患するという報告もあるほど急性中耳炎は子供にありふれた病気です。

ガイドラインの作成過程は?

世界各国でも小児急性中耳炎に対するガイドラインは作られています。どの国でも重要とされているのが鼓膜所見の同定と記載です。
急性中耳炎の場合には小児科で診てもらうこともありますが、鼓膜所見の同定や記載ができない場合には顕微鏡や内視鏡による鼓膜観察が可能な耳鼻科への紹介を勧めています。
このことからも鼓膜所見を正確に診ることができることが最も重要なことなのです。耳の痛みなど耳の症状がある場合には耳鼻咽喉を受診することが重要です。

急性中耳炎とは?

急性に発症した中耳の感染症で、耳痛・発熱・耳漏を伴うことがある。としています。
急性とは、症状が出現してから3週以内を目安としています。
その他には、中耳に貯留液が認められない場合は急性中耳炎と診断すべきでないとしています。つまり耳が痛いから急性中耳炎です。とはいえないということですね。

小児急性中耳炎01

どんな子供が急性中耳炎のリスクが高いの?

  • 集団保育を受けている、もしくは集団保育を受けている兄弟がいる場合は、難治性になる可能性があります。
  • 片側だけでなく両側で急性中耳炎を発症すると難治性になる可能性が高いとの報告もあります。
  • 年少児は重症化する傾向が高いことも知られています。

どんな子供が急性中耳炎を繰り返しやすいの?

初めて急性中耳炎にかかる年齢が重要とされており、生後1歳までに急性中耳炎にかかるとその後急性中耳炎にかかりやすくなります。また生後半年までに急性中耳炎にかかった場合は、より反復しやすいこともわかっています。
生後2歳までに反復する中耳炎の回数がその後の繰り返しやすさに重要な影響を与えると考えられています。

予防はできるの?

肺炎球菌結合型ワクチンの接種が急性中耳炎に対して一定の効果があると考えられています。

急性中耳炎になったらどれくらいの間隔で通院すればいいの?

抗生物質を使用している場合も、軽症で抗生物質を使用していない場合も3日程度で受診できると安心です。抗生物質の投与も5日程度で効果判定することが推奨されています。

鼓膜切開はしたほうがいいの?

急性中耳炎というと鼓膜を切って膿を出してあげた方が治りが早いと昔は考えられていました。しかし、今は鼓膜を切ることが早く治るという報告は少ないのです。
鼓膜切開のメリットは、耳痛や発熱、難聴の症状が早く改善するという点です。ただし、切開による疼痛や穿孔(切開した穴)が塞がらずに残ってしまうリスクなどが挙げられます。
このようにリスクもある治療なので耳鼻咽喉科の医師に相談して治療を決定することを推奨しています。

小児急性中耳炎02

最後に

ガイドラインにも記載がありますが、この内容を全ての患児に適応することが正しいわけでは決してありません。医療者は正しい知識を持っていることが前提ではありますが、患児およびそのご家族と共に病気と闘っていくことが大切です。
医師と患者様ご家族といい人間関係を築くことが治療の第一歩だと考えております。どんな些細なことでもかまいません。気になることは遠慮なくおっしゃってください。そんな病院を市川ピースクリニックは目指しています。